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保有技術

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保有技術

SEC(エス・イー・シー)練混ぜ

特 長

7. トンネル工事で湿式吹付けコンクリートとして使用する場合、
  発生粉じん量、はね返り量が減少します。

トンネル工事でNATM工法の場合、一次覆工として吹付けコンクリートを用います。
圧縮空気でフレッシュコンクリートを急結剤とともに吹き付けて硬化させます。
SECコンクリートは発生粉じん・はね返りが減少し、強度が向上するので、400以上の多くの現場で採用された実績があります。

SEC練混ぜコンクリートの吹付け状況

SEC吹付けコンクリートの主な特長

1)粉じん発生量が低減します。
土木研究所共同研究での試験結果参照

2)はね返りが減少し、骨材、セメント、急結剤使用量が減ります。
土木研究所共同研究での試験結果参照

3)吹き付けたコンクリートの強度(特に初期強度)が向上します。
土木研究所共同研究での試験結果参照

4)微粉末(シリカヒューム・石灰石微粉、・フライアッシュ等)を使用するとき、よく練りまぜることができ材料の特性を生かせます。
次項 8.微粉の項 を参照

5)ポンプ圧送性が良いため、配合・使用骨材の範囲が広がります。
5.ポンプ圧送の項参照

イメージ:土木研究所共同研究での試験結果

出典:「粉じん低減を目的に実施した実大模擬トンネルでの吹付け実験(その5)」
高野、鈴木、大下、波田:土木学会第60回年次学術講演会講演概要集 6-021, P4~5, 2005年

なお、上記出典の論文の表の各ケースの4週強度は下記の表の結果でした。

コア供試体4週強度(N/mm²)

一 括 23.8
SEC① 25.9
SEC② 27.4
SEC③ 30.3

粉じんが低減し、はね返りが減少する要因

同じ配合で練混ぜ方法を変えて、SECコンクリートとしたときの「粉じん」および「はね返り」の減少について述べます。
前述の土木研究所における共同研究では、同一施工条件で各粉じん低減対策法を客観的に比較することができ貴重なデータが得られました。
これは、「トンネル工事における吹付け作業時の発生粉じん対策技術の手引き(案)」(独立行政法人 土木研究所:平成18年4月)で、結果が発表されており、より具体的な個々の対策については土木学会第60回年次学術講演会講演概要集に論文が発表されています。
SEC吹付けコンクリートについては粉じん量では、一括練混ぜ(無対策基本ケース)で5.8mg/m³に対して、SEC①~③のケースでは約4.5 mg/m³です。
また、はね返り率では一括練混ぜの23%に対して、SEC①~③のケースは約17%です。
共に、セメント量の違いによる影響は大きくなく、練混ぜ方法による違いが支配的と考えられます。

粉じん発生の原因

下欄で空気吹付けの状況を、4,000コマ/秒の高速度カメラで撮影した映像を見ることができます。
吹き付けられるコンクリート塊の速度は40m/秒程度で、ノズル口を出た所から少し幅が広がっていることが分かります。

吹付け状況映像
吹付けコンクリート量 8m³/時間
コンクリート塊速度 42m/秒
(映像解析による)

従来、粉じんの発生原因は次のようないくつかの原因が考えられていました。
1) コンクリートに未付着の急結剤(粉体)の飛散。
2) 吹付け面にコンクリート隗が衝突することによる飛沫の飛散。
3) ノズル出口の噴発、空気の膨張による飛沫の飛散。

土木研究所との共同研究でのデータによれば、1)急結剤および2)吹付け面との衝突飛沫は主要な原因ではないことが分かります。

1)急結剤飛散
右上図は粉体急結剤の添加率を変化させて、粉じんに対する影響を調べた結果ですが、急結剤を添加しないで吹付けを行った場合の方が発生粉じん量が多いことが分かります。
粉体急結剤はコンクリートの水と反応することで、飛沫の発生を抑制すると考えられ、粉じん発生の主原因ではないと分かります。

イメージ:粉じんに対する急結剤添加の影響
粉じんに対する急結剤添加の影響

2)吹付け面との衝突飛沫
右下図はノズルと吹付け壁面の距離を変化させて、発生粉じん量を調べた結果です。
距離が1mと4mで比較すると、衝突速度が遅い4mの方が粉じんが多いということは、発生粉じんは衝突により発生する飛沫ではないと考えられます。
吹き付けられたコンクリート隗が壁面と衝突する際に飛沫が発生するのは地山などの固い面に初めて吹き付ける場合で、すでに吹き付けられたコンクリート面(柔らかい)への吹付けでは衝突の衝撃は小さく、飛沫の発生は少ないと考えられます。

イメージ:ノズルと吹付け壁面との距離の影響
ノズルと吹付け壁面との距離の影響

図の引用:「粉じん低減を目的に実施した実大模擬実験(その3)」
赤坂 他:土木学会第60回年次学術講演会講演概要集 6-019, P37~38, 2005年

下図に切羽より10mでの総圧送空気量と粉じんの関係を示します。
総圧送空気量が大きいと発生粉じんも大きいことが分かります。
総圧送空気量が大きくなれば、ノズル出口での空気の流速が大きくなります。
ノズル出口での空気の流速が大きくなるため、発生粉じんが増加すると考えられます。

イメージ:切羽より10mでの総圧送空気量と粉じんの関係

切羽より10mでの総圧送空気量と粉じんの関係

図の引用:「粉じん低減を目的に実施した実大模擬実験(その10)」
野間 他:土木学会第60回年次学術講演会講演概要集 6-019, P51~52, 2005年

コンクリートの吹付けでは、使用される圧縮空気は吹付けノズル口付近で、大気圧に減圧されることで体積が膨張すること、ノズル口が絞られることなどの理由で、速度が最大となります。
吹き付けられるコンクリート塊はノズル口付近で、圧送空気の速度が最大となるため周辺空気流との速度差が最大(下図の場合60m/秒の速度差)となり、コンクリート塊の表面のセメントペーストが剥がされて飛沫状になり飛散し、空気中に浮遊し粉じんとなると考えられます。

イメージ:吹付け管の各部空気流速図(例)

吹付け管の各部空気流速図(例)

イメージ:飛沫剥離の概念図

飛沫剥離の概念図

例としての上図の場合、コンクリート塊の吹付け速度は最大40m/秒程度に対して、空気流はノズル出口で100m/秒程度になります。(総圧送空気量12Nm³/min、ノズル出口径50mmの時)
また、吹付けノズルから大気に放出されるとき、急激に大気圧に減圧されるので、セメントペーストが飛沫状になることが促進されると考えられます。
このように、吹き付けられるコンクリート塊はノズル出口通過時に急激な「周囲空気流との速度差の変化」と「圧力変化」を受けます。使用する総圧送空気量が増加するとそれらの変化はさらに大きくなり、表面に付着しているペーストの剥離・飛沫が増加するため粉じん量が増加すると考えられます。

このことから、セメントペーストがより飛散しにくい特性であれば粉じんの発生量が減少すると考えられます。

SECコンクリートの粉じんの減少。

SECコンクリートはセメントが分割練混ぜのペーストとなっていますが、このペーストは一括練混ぜ(通常練混ぜ)コンクリートのペーストと比べ降伏値が大きいという特性があります。

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降伏値が大きいということは外から力が加わったとき動きにくい(変形しにくい)ことになります。
これは、コンクリート塊表面のペーストが瞬間的な周囲空気の流速増加や圧力の減少に対して変形しにくく、飛沫として剥がれにくい事になります。
このような理由で、SECコンクリートは吹付けにおいて発生粉じん量を低減できます。

SECコンクリートのはね返りの減少。

コンクリート吹付け時のはね返りの材料構成は、粗骨材が配合比率に対して大きく増大します。
はね返りは吹き付けられるコンクリートの粗骨材が、すでに吹き付けた粗骨材など固いものと衝突するとき、はねて落下することがその主要な原因です。
粗骨材にビリ(小さな粗骨材)を使用することではね返りが減少することからこのことが分かります。
しかし、すでに吹き付けられた直後の部分の外力による変形のし易さ(変形性)があると、後から飛来する粗骨材の運動エネルギーの吸収ができ、跳ね返りの量が減ります。
振動を加えられているときの変形のしやすさとは、塑性粘度が小さいことにより発揮されます。
SECコンクリートはこのペーストが一括練混ぜコンクリートのペーストと比べ塑性粘度が小さいという特性があります。

>>詳しくはこちら

吹付け面に粗骨材やコンクリート塊が衝突することにより、振動が発生し流動性が大きくなり、変形しやすくなります。
このためSECコンクリートは、はね返りが小さくなると考えられます。

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